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2025年問題と介護業界の転換点
2025年、いわゆる「2025年問題」は、団塊の世代が75歳以上となり、要介護人口が急増する年として注目されています。この年は、介護業界にとって重要なターニングポイントであり、政府や自治体、そして介護事業者がこれまで行ってきた準備の成果が問われる時期です。
しかし、現状では地域包括ケアモデルの整備や報酬改定を通じた支援体制が十分に整っているとは言い難い状況です。特に訪問介護サービスの報酬減少や物価高騰による経営環境の悪化は、介護事業者に大きな負担を強いています。2024年には過去最多の事業者倒産件数が記録され、2025年を迎える準備が不十分であることが浮き彫りになっています。
2040年を見据えた制度改革の方向性
2040年に向けて、高齢化率は約40%に達し、地域ごとの高齢者人口の増減が大きく異なる時代が訪れます。都市部では高齢者人口が増加する一方で、地方や中山間地域では減少が進むと予測されています。このような状況下で、政府は全国一律だった介護保険制度を見直し、地域特性に応じた柔軟な制度設計を進める必要があります。
また、高齢者を支える現役世代の人口減少も深刻な課題です。これに対応するため、多様な労働力の活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上が求められています。特に外国人労働者や短時間・単発労働者の活用、タスクシフティングによる業務分担は今後の重要なテーマとなるでしょう。
ケアマネジャーの役割と課題
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護サービスの提供において重要な役割を果たしています。しかし、その業務範囲が広がり続け、「何でも屋」的な負担が増大している現状があります。郵便物の受け取りや電球交換など、本来ケアマネジャーが行うべきではない業務まで対応しているケースも多く見られます。
2027年に向けた制度改正では、こうした業務を整理し、保険外サービスとして適切な事業者に委託する仕組みが議論されています。また、ケアマネジャーの処遇改善も大きな課題です。現時点では処遇改善加算の対象外となっているケアマネジャーですが、今後は対象拡大が期待されています。
身元保証事業の現状と課題
高齢化社会の進展に伴い、身元保証事業への需要は急速に拡大しています。しかし、この分野は現在も法規制が不十分であり、一部の悪質な事業者によるトラブルが問題視されています。例えば、高額な入会金を徴収したにも関わらず、必要なサービスを提供しない事例や、預かった財産を不適切に管理するケースなどが報告されています。
こうした状況を受けて、2022年には「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が策定されました。しかし、このガイドラインは法的拘束力を持たないため、信頼できる事業者を選ぶ際には慎重な判断が求められます。特に財産管理方法や契約内容の透明性は、信頼性を見極める重要なポイントとなります。
令和6年12月12日付けで公表された「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会 中間整理」では、死後事務については、身元保証事業者(高齢者等終身サポート事業者)等に外部委託し、ケアマネジャーの業務負担を軽減するといった対応が想定されています。
集合住宅・紹介センターの不正問題とその影響
最近では、有料老人ホームや集合住宅に関連する不正問題がメディアで取り上げられる機会が増えています。特に紹介センターによる高額な手数料徴収や、不適切な契約内容が問題視されています。一部では紹介料として100万円以上を請求する事例もあり、国会でもこの問題が取り上げられるなど注目を集めています。
厚生労働省は、公的ガイドラインや自治体との連携を通じて対策を講じる方針ですが、具体的なルール作りにはまだ時間がかかると見られています。一方で、一部の団体が独自にガイドラインを策定し、不正防止に向けた取り組みを進めています。
介護業界が進むべき道:団結とプロフェッショナリズムの追求
これからの介護業界は、大きな変化と課題に直面しています。その中で重要なのは、業界全体が団結し、現場からの声を政策決定に反映させる力を持つことです。また、プロフェッショナリズムを追求し、高齢者やその家族に信頼されるサービスを提供することも不可欠です。
特にケアマネジャーや身元保証事業者など、介護サービス提供者一人ひとりが専門性を高め、公正で透明性のある運営を行うことが求められます。これにより、高齢化社会における安心・安全な生活基盤を築くことができるでしょう。
介護業界には多くの課題がありますが、それ以上に可能性も秘めています。関係者一丸となって取り組むことで、日本社会全体が高齢化という時代の波を乗り越える力となることを期待します。
監修者
■株式会社あかり保証 代表取締役 弁護士 清水 勇希(YUKI SHIMIZU)
2016年11月司法試験予備試験合格(大学4年時、21歳時)、2017年3月立命館大学法学部卒業(首席で修了)。2018年弁護士登録(大阪弁護士会)。
2021年~2023年大阪女学院大学・短期大学非常勤講師。2022年~2023年立命館大学非常勤講師(民事訴訟法)。2023年~ 立命館大学エクステンションセンター 法科大学院(ロースクール)講師。2023年~株式会社エアトリ(東証プライム) 社外監査役。2024年~医誠会国際総合病院「観察・介入研究倫理審査委員会」外部委員。
「身元保証業界を変えたい」「身寄りのない高齢者の方に、信頼かつ安心のあるサービスを提供し、一番頼りになる存在となりたい」と思い、株式会社あかり保証を創業。